TRPGにそれほど必要ではないこと。

TRPGサーバー 「Sandbox」 Advent Calendar 2019 の寄稿記事です。
https://adventar.org/calendars/3873

 TRPGの未経験者にどうやってTRPGを薦めればいい?
 そんな話に覚えがある方も一人や二人ではないでしょう。未経験者を勧誘できればTRPGの人口が増え、ひいては卓の回数も増え、PLを出来る可能性も高くなってくる……重要なテーマです。
 ただ、それはあくまで未経験者の方を対象とした話。「どう継続させていくか」についてはあまり話されることが無いように感じます。
 それこそ、肌に合わなかったなら残念だ、仕方がない。くらいでしょうか。

 しかしながら、体験者(1~2回ほどプレイしたことのある初心者をこう定義する)からするとこれまた突き放されたように感じることもあるのではないか……そう考えて今回のテーマを「それほど必要ではないこと。」とさせていただきました。

いやだって、結局テクニックが必要じゃないか

 未経験者がTRPGに誘われて、プレイする。初体験であることを踏まえて他のPLやGMも丁寧に教えてくれる。
いい環境だ、いい環境だけれども……こんな色々要求されて、ついていける気がしない。捜索っていっても何処を調べればいいのか、NPCと何を話せばいいのか、やること(やれること)はたくさんあるけれども、それを扱いきれる気がしない……
 それなのに、他の人達は自然にそれをやってのける。となれば付いていけないと考えてフェードアウトしてしまう。
 「セオリーがよく分からないから」と……

 なんて勿体ない悲劇でしょう。
 体験者からすれば、置いていかれたような感覚を抱きTRPGをする機会を失ってしまう、経験者からすれば折角興味を持ってくれた人を手放すことになってしまう。

 こんな事態を回避するために、自然にやっているように見えても無くても問題ない要素を3つ程ピックアップ、少しばかりご説明をさせて頂きましょう。

表現力

 TRPGにおいては多くの場合、美麗な映像などというものは用意されておらず、簡単なMAPやNPCの立ち絵などがある程度。故にそれを補完する表現が必要となる。これ自体は正しい考えです。今PC達はどこにいて、何をしているのか。それが共有されていなければゲームを円滑に進めることは困難となるでしょう。
 ただ、それをもって表現力が必要とされていると判断するのは尚早であると思われます。ここで求められる表現とはいわゆる5W1Hを説明出来るかどうか、程度であり、自分の思い描いている風景を描写することではないからです。
 例えば、あなたのキャラクターが学生で、今学校で勉強しているならば「学校で」「勉強をしている」で十分でしょう。その学校の名前が何でどのくらいの生徒がいて、教師は誰で何の授業なのか……といった設定面の描写は、もちろん加えればより鮮明な情報の共有は出来るでしょうが、それをしなくても十分にイメージは共有できると思います。
 人によっては、「体育で外にいることにして外部の情報に触れやすくする」だとか「保健室で寝ていることにすれば何か遭った時に動きやすい」だとか考えることもあるかもしれません。ゲームマスターが認めるのであれば、それは一つの面白いアイディアであると思われますが……そんなことをしなければいけないシナリオに出会ったことはありませんし、真似をする必要も無いのではないでしょうか。

知識

 ゲームを有利に進めるために自分が持っている知識を活用しようとするプレイヤーというのも存在します。法律を盾に合法的な武器を所持するですとか、あるはずの設備を要求する。実際の場所を舞台としたシナリオで現在の地図を持ち出して探索を進める……特に現代が舞台だと比較的要求されやすい事柄であり、そういった知識でゲームを動かすことをテクニックだと考えてしまう方がいらっしゃるかもしれません。もちろん、これもそんなことは無いです。
 もちろん、それをすることで意外な攻略ルートが見つかるかもしれませんが、それはGM(若しくはシナリオ製作者)がそれを考慮したから生まれたルートであり……それをしなかったからクリアが不可能になった、なんて話は前述の「表現力」以上にあり得ないことでしょう。プレイヤーが(ゲーム内部以外の)知識を持っていなければクリア出来ないシナリオというのはそれ自体が破綻していますし、もし万が一そんなシナリオに当たってしまってもそれはプレイヤーの責任ではありません。
 故に、知識を持っていればゲームが有利になる、返して知識がないから足を引っ張ってしまうということもあり得ません。大体なんでゲームでそんな畏まったことをする必要があるのでしょう。
(クイズがメインのゲームとかは知識を楽しむゲームでもありますので、それはまた別として)
 ただ、これは別に現実のルールに反したことを許可すべき、ということでもありません。現代日本を舞台に拳銃をぶっ放すことを無条件に許可したらまあまあ破綻します。……これは極端な例ではありますが、もし何か知らない理由により「規制」されることがあったとすれば、基本的にはそれに沿った動きをするのが無難でしょう。「それをしなくてもクリアできる」ことは約束されているはずなのですから。

独創性

  面白いビルドや個性的なキャラクター、円滑なロールプレイ……経験豊かなプレイヤーを見ると、そういった能力に富んでいるように思えます。多分そんなことはないです。
 もしかすると中には本当にそういった能力が高い方もいるかもしれませんが、全員が全員そんな素晴らしいアイディアマンであるかと言えば、そんなこともないでしょう。
 たまに、「作品のキャラクターをそのままPCにするのは地雷」だとかいった話も聞くことがありますが、私としてはそうではないと考えます。むしろ最初はそこから始めるのが良いとまで思います。
 なんだかんだキャラメイクは難しく、キャラクターのロールも難しい。しかし元ネタがあればその難易度は激減するでしょう。例えば、少年キャラを作る時に、ゼロから作り始めるより、某ネコ型なロボットの人物を参考に「頭が悪く身体能力も低いものの射撃の能力だけはピカ一の少年」をイメージして作ればどんな能力を持っているのかが想像しやすく、ロールプレイの参考にもなるでしょう。
 それで少し慣れてきたら、次は性格面や設定を書き換える……例えば性格だけを同作品のガキ大将にする。でもそうなるとひ弱なガキ大将というのに違和感を覚えることでしょう。そこで、「身体能力を向上させる」だったり「(匿名掲示板の)ガキ大将」とかに変更するといった考えが浮かんでくると思います。(もちろん、ひ弱なガキ大将という設定もそれはそれで面白いと思います)
 そういったことを繰り返すことで、いつの間にか他のプレイヤーのような、個性的なキャラクターが生まれ、そのキャラクターを上手く動かせるようになっているでしょう。
 故に、最初は模倣からでいい、と私は考えております。

おわりに

 体験者が継続したくなるような環境をどう構築していくか。様々な媒体でTRPGの話が聞こえるようになった今日では、未経験者に対するアプローチは勿論のこと、その後のアフターフォローに関する話もより活発化させる必要があると、そう考えます。
 その一助となれば、幸いです。

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