ソード・ワールド2.5で始めるシナリオ作成【前編】

TRPGサーバー 「Sandbox」 Advent Calendar 2019 の寄稿記事です。
https://adventar.org/calendars/3873

まず、TRPGを遊ぶためには GM(ゲームマスター) とPL(プレイヤー)がいて、ルールブックとサイコロとシナリオとキャラクターシートを用意する必要があります。
基本的にシナリオはGMが用意します。

シナリオは、
・ルールブックに掲載されているもの
・シナリオ集という本に掲載されているもの
・有志が制作してくれたネットで公開されているもの
などがあります。

ですが、それだけだとTRPGを遊ぶためのシナリオが不足していまいます。
キャラクターが成長し、レベルが上がるにつれてキャラクターたちに合うレベル帯のシナリオが少なくなっていくからです。

今回はシナリオが無くて困っている人を対象に、最低限遊べるシナリオの作り方をまとめてみました。

この枠内では、例としてサンプルシナリオを書いていきます。
今回書くサンプルシナリオでは、レベル4のPCが5人いることを想定しています。
大体4~5回ほどのセッションをした冒険者向けです。

シナリオ作成の概要

まずは、普通のシナリオがどのようなものなのか考えてみましょう。
私はだいたい下記のように進めています。

シナリオの流れ

最低限シナリオに必要なものはこんな感じです。

  1. 導入
  2. 移動&探索
  3. ミドル戦闘
  4. 移動&探索
  5. クライマックス戦闘
  6. エンディング

※もちろん、シナリオの内容次第でこれとは異なることもあります。

今回シナリオを書く順番

  1. クライマックス戦闘
  2. ミドル戦闘
  3. エンディング
  4. 導入
  5. その他

私がシナリオを書くときは、この順番になることが多いです。
できるだけ結末にあたる部分からイメージして
「どうしてその場面になったのだろうか?」
という疑問を解消するように前半部分を創ります。

このように、自分の考えた物語に対して「なぜ?」を突き詰めていきましょう。

敵(エネミーデータ)を用意する

まずシナリオ中に出てくる敵を用意します。
敵のレベルはPC(プレイヤーキャラクター)の冒険者レベルを基準にします。

ルールブックに掲載されている敵データの下部に、その敵の生態について書かれています。
書いてある事象に沿って、シナリオをつくっていきましょう。

ボスを用意する

あえて、一番最後となるボスとの戦闘から決めていきましょう。
ここが決まるとシナリオのおおまかな流れが見えてきます。

ボスの強さの目安は、PCの平均レベルから2レベル高い魔物を用意するといいでしょう。
そこに敵の数がPCと同数になるように、PCと同レベルの魔物を用意します。
ボスが多部位である場合、1部位をPC1人分と換算します。

さらにPCレベルに等しい数の剣のかけらを用意します。
ボスにのみ剣のかけらによる強化を行うと難易度が上がります。
逆に、難易度を下げる場合はボスだけでなく取り巻きにも分配することになるでしょう。

今回私がボスとして用意するのはレベル6、プレーンセンチピード(Ⅱ-396頁)です。
合計部位がPCの人数と等しくなるように頭部が1部位、胴体を4部位用意しました。
ルールブックにこの魔物は線路を防ぐことがあるという記述がありますので、シナリオは列車が舞台になるでしょう。

この段階で「どうして列車に乗るのか?」「なぜこの魔物が出てくるのか」という疑問が浮かびます。
これに対して私は「列車に乗って貴重なモノを運送する任務のため、PC達は列車に乗る」「その貴重なモノを奪う強盗たちが列車を止めるために、プレーンセンチピードを誘導した」という答えが思い浮かびました。

ミドル戦闘について考える

ミドル戦闘ではPCと同レベルの魔物を、PC人数と同数用意します。

もしかしたらPCたちにとって簡単な戦闘になってしまうかもしれません。しかし、それでも問題はありません。
物語の世界に参加者を誘導するためのシーンを用意してあげましょう。

PC側のレベルに合わせ、レベル4の敵を5体用意したいと思います。
今回は冒険者VS強盗というシナリオにしたいので、人族に化けられる蛮族のレッサーオーガ( Ⅰ-442頁)3体と、人族側の協力者として匪賊の首領(Ⅲ-441頁)2体を出します。
この敵たちが、列車の中に潜んでおりPCたちを襲うという流れにしましょう。

シナリオの筋道を定める

ここからはどうして今回のお話が始まったのか、どのような結末を迎えるのかを決めます。

エンディング

先ほど決めた敵を倒したことによって、どうなったのかを考えてみましょう。
困ってる人が助かったり、危機から逃れることができたり・・・
PLが楽しんでくれるような結末を創りましょう。

また、忘れないうちに報酬のことも決めておきましょう。
ルールブックにそれぞれ目安が記載されているので、それを参考にしましょう。(Ⅰ-399頁など)

荷物を運ぶという依頼を達成するだけでなく、その荷物を狙う強盗も倒したということで追加報酬が貰える!やったー!
と、いうようにPCの行動に合わせて報酬が増えることは、とても大事な演出です。
レベル4なら報酬の合計金額は2500~3000Gかな?と思うのですが、今回はあえて報酬を2つに分けましょう。
運送任務の基本報酬は「簡単なおつかいだからちょっと安めに一人2000Gだ」と提示しておき、後から追加報酬として500G追加することとします。

導入・途中の探索について

もうすでにシナリオの全体像が見えてきた頃になりますが、まだまだ決めなくてはならないことがあります。
「今回のシナリオのきっかけは何だろうか?」「途中でPCたちが寄り道するとしたらどんなことをするだろうか?」「どのような過程を経て戦闘が起こったか?」などなど…

まずは導入ですが、基本的には誰かが報酬金を用意して仕事を依頼してくれるという形が分かりやすくていいと思います。
それ以外では、冒険者としてお宝を探して遺跡にトレジャーハントに出かけたり、奈落の魔域が出現し巻き込まれたり、人為的な事件に巻き込まれたり……。
レベルが高くなれば、闘技場に参加することになったり、蛮族との戦争に参加することになるかもしれませんね。

探索・移動についてですが、あまり色々詰め込みすぎないように意識しましょう。
そういう要素は大抵の場合、PLがやりたいと言った行動を反映させていくうちにストーリーが勝手に膨らんでいきます。
また、本当にストーリーの進行に必要なことについてはサイコロを振らなくても進むようにし、ストーリーの進行に影響があまりない部分にのみサイコロを振る判定を用意しましょう。

サンプルシナリオの依頼は既に決まっているので、導入部分は「何か荷物を届けたい人」で良さそうです。その依頼が報酬金に見合うものかキチンと考えておきましょう。

途中にイベントとして、ほかの乗客と会話したり、そこで盗難や強盗事件が多発している噂を耳にすることがあっても良さそうです。
このように「発生すると有利になるが、発生しなくても問題ないイベント」では、積極的に判定を求めてサイコロを振らせてみましょう。
PL側が積極的に行動してくれるように、個性的で魅力のあるNPCを数人用意しておくと素敵なシナリオになりますね。

整合性を確認する

ここまで決めたことに矛盾点がないか流れを確認します。
どれほど気を付けていてもシナリオに穴が空くことはありますので、そのときはPLに謝罪し、PCたちにおこなって欲しいことを正直に伝えましょう。

実際にプレイするときに大事になるのは、PLが提案した行動をどこまで反映させていいのかです。
柔軟にアドリブで対応し、その場で辻褄を合わせるGMは完璧でかっこいいですが、それは不可能です。
慣れないうちは、一本道のお話を作りこんでしまって、途中で脱線してしまっても元のお話に戻れるようにマスタリングしましょう。
「このときPCはどんな気持ちで行動してるか」「どんなものが見えるだろうか」などイメージすると軌道修正するときに余裕が出来ますし、PCに目線を合わせることで情景描写がより伝わりやすくなるでしょう。

逆に、設定が増えすぎて考えがまとまらず、混乱してしまうこともあるでしょう。
そういったときは、あえてシナリオで「決めていないこと」を作ってもいいかもしれません。
例えば、道中に分岐路があり、片方を先に目指してもらい、後からもう片方に向かってもらいたいというシナリオを考えたときに「どうやって順路へ進んでもらうか?」を考えるくらいであれば、PLに右か左か選ばせて、先に選んだ方を最初に通ってほしい道とするのがいいと私は思います。

道中は列車の中なので、寄り道によってシナリオの本筋から離れることはあまりなさそうです。
もし「列車に乗る前に街中を探索したい」と提案されれば「構いませんが、列車の出発時刻は一時間後ですのでそれまでに行動を済ませてください」と返すように、想定できるPLの発案に対する回答をシミュレーションしておきましょう。

まとめ

この記事を読んで、困っている人の助けになればいいなとは思いますが、この記事だけを読んでシナリオが書けるかというと難しいと思っています。
というのも、シナリオを書くことは何もないところから生むのではなく、自分の中にある経験や知識を使って何か小さなきっかけを大きく膨らませることだからです。

最初はルールブックに記載してあることをきっかけにして書くといいでしょう。
慣れてきたら、システムごとの世界観設定を自分なりに解釈してオリジナルの設定を付与させてみたり、自分の好きなアニメ・ゲーム・小説などからアイデアを得て変換したり、自分がPLとして体験した卓を次はGMとして自分なりに改変したり……
あなたの、これまで得てきた様々な体験があなたのインスピレーションを刺激させることでしょう。

自分を表現するということが怖いという方も、まずはSandboxで練習してみませんか?
チャレンジしてみようという方を私たちは歓迎いたします。

次の記事について

今回、例として挙げたシナリオをサンプルシナリオとして「ソード・ワールド2.5で始めるシナリオ作成【後編】」というタイトルで公開したいと思います。

追記:
こちらです。
http://sandbox.sakuraweb.com/?p=992

著者 ネミ
SandboxでStaffとしてお手伝いしています。
あなたが今開いているこのサイトの管理人です。
プログラム書いたり、デザインしてたり、悩める人のためカウンセリングしたり、Sandbox管理人のYukiさんにウザ絡みして叱られたりしている、なんだかよく分からない人です。

コメント

  1. […] 前日に引き続き、今日の記事もネミが担当します。前編の記事にて例として一部掲載したシナリオを、記事としてまとめました。適宜調整、改変など行い使用してください。 […]

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