ソード・ワールド2.5で始めるシナリオ作成【後編】

TRPGサーバー 「Sandbox」 Advent Calendar 2019 の寄稿記事です。
https://adventar.org/calendars/3873

はじめに

前日に引き続き、今日の記事もネミが担当します。
前編の記事にて例として一部掲載したシナリオを、記事としてまとめました。
適宜調整、改変など行い使用してください。

情報

この形式の枠内には、PLに対してそのまま提示できるような情報をまとめます

GMへ

この形式の枠内には、マスタリングの助けにつながるような情報や設定についてまとめます

レギュレーション

推定プレイ時間:2~3時間(テキセの場合4~5時間)
使用ルールブック:1・2・3巻(PLは1巻のみでも可)

キャラメイク:
継続キャラクターの場合、セッションを5、6回経験したキャラクター
新規作成の場合、下記の通り成長させること
経験点:+7000点
所持金:+4800G
成長回数:5回
名誉点:50点

舞台背景

今回の舞台は、2巻に掲載されているアルフレイム大陸のドーデン地方のキングスレイ鉄鋼共和国とします。今回の依頼人は冒険者ギルド「煤の溜まり場」のマスターであるものとしていますが、継続キャラクターの設定と矛盾する場合は変えても問題ありません。

シナリオ

シナリオの流れ(GM向け)

冒険者たちにはギルドマスターと一緒に魔動列車に乗り、第三都市グランティンまで荷物(集めた剣のかけら)を運ぶことになります。
護衛対象は依頼人と荷物です。
到着までかかる時間は6時間としております(ルルブに時間や距離の記載はないため仮のものである)。
道中、車内に潜伏していた蛮族列車強盗団の一員が、ギルドマスターに似ている乗客を襲います。
乗客の悲鳴を聞いて駆けつけたところで戦闘になります。
戦闘が終わると強盗団員が外にいる仲間に合図を送り、列車までプレーンセンチピードを誘導されてしまいボス戦になります。

導入

あなたたちはキングスレイ鉄鋼共和国にいる冒険者です。なお、既にパーティを組んでいてもいなくても構いません。
特に冒険者ギルドを用意していない場合、「煤の溜まり場」というギルドに所属しているものとします。ギルドマスターも自由に設定して構いませんが、決まっていない場合はラウロさんという30代の人間の男になります。

今日は特に依頼もなく、PCの冒険者全員が正午までギルド内でダラダラとしている。
他の冒険者はみんな出払っているようです。
そこでマスターが「君たちに頼みがある」と店に残っているPCの冒険者たちに仕事を持ちかけます。

依頼の概要

依頼人:ラウロ(冒険者ギルド「煤の溜まり場」のマスター)
報酬:1人2000G+α

内容:
魔動列車に乗り、第三都市グランティンまで荷物を運ぶため護衛を頼みたい。
また、最近では護送用の貨物列車が狙われる事件が多発しているため、今回は一般客も乗る観光用車両を使う。
よって、一般客に怪しまれないために乗車中は乗務員に変装し、簡単な雑務を行ってもらう。
その働き次第では報酬を上乗せしよう。

GMへ

まず今回の依頼では、魔動列車の乗車賃をマスターが負担するため報酬は少し安めにしています。(最後に報酬を追加するため提示する金額このままにしておき、少ないと思ったら後から増やすようにしてください)
この時点では荷物の中身を詳しく描写せず、PLに尋ねられたら「ラウロ1人が持てる量の貴重品である」とだけ伝えてください。
(報酬の価値と、運搬する荷物の価値を比べられないようにするため)
ちなみに荷物の中身は大量の剣のかけらです。

報酬の前借りについては1000Gを目安に自由な金額を設定してください。
前借りをさせたくない場合は「君たちの乗車賃もこちらが負担するのだからそんな余裕はない」と説明しましょう。
TRPGにありがちな報酬の上乗せをねだるPLがいた場合は「一般客にチップをたくさん貰えるように頑張って働いてくれ」とお伝えください。

なお、現在時刻は12時とし、列車は13時に出発するものとします。
一時間の猶予を与え、買い物やコンジャラーのゴーレム製作の時間としてください。

駅にて

ここで車掌から、あらかじめ手配していた乗務員の制服を受け取ります。
魔動列車の乗務員は、様々な種族がいるため制服もピッタリ合うでしょう。
また、乗務員は武装していることもあるため冒険者たちも武器や防具を常に装備しているものとします。そうしないと戦闘開始時に非装備状態となってしまいます。

この時点で特にやるべきことはありませんが、もし何か探索したいと言われた場合は冒険者レベル+知力ボーナスで聞き込みをさせます。
提示する目標値は12で、成功すると「この観光列車では美味しいご飯が有名で、ヘルシーだけど満足感の得られると評判」ということが分かります。
達成値が19を超える場合は「最近は物騒で、客車列車でさえ襲われることがある」ということを教えてもいいでしょう。

魔動列車の車内にて

列車は五号車以外は自由席となっている。
お客さんも乗ったところで列車は出発する。

客車案内

乗降口は一号車にあります。一号車側が前方、五号車側が後方です。

一号車:ラウンジカー
 ⇒基本的にここで車掌とやり取りをする。ギルドマスターもずっとここにいる。
二号車:ダイニングカー
 ⇒キッチンと客席が並んでおり、ドリンクや軽食を取り扱う。人気なのは林檎酒と野菜たっぷりのサンドイッチ。
三号車:ゲストルームカー
四号車:ゲストルームカー
 ⇒座席に簡易的なパーティションがあり、ちょっとした個室のようになっている。自由席。
五号車:ゲストルームカー
 ⇒VIP向けに一車両がまるごと一室となっている指定席。

GMへ

車両の様子はこの時点では細かく定めないものとし、そのときの状況に応じて描写を増やしてみてください。
後述のNPCに加えてオリジナルキャラをいくら作成しても構いません。
ダイニングカーにて取り扱う軽食メニューを増やして飯テロしてもいいです。
このあたりのシナリオ改変を推奨します。

ちなみに一号車より前方に動力機関や運転台があり、運転台に機関士に変身したレッサーオーガが紛れ込んでいるという設定です。良い感じのタイミングでこのレッサーオーガが動力に細工を施し列車を止めます。
その列車が止まるタイミングは自由に設定が可能であることからGMが好きなタイミングで探索パートを止め、シナリオを進行できますので、セッションの進行時間に合わせて以降に記述するシーンをスキップしたり、追加したりしましょう。

客車から運転台には通じていないため、探索により犯人がバレてシナリオが空中分解することはないと思います。多分。

客車の描写は自由です。「観光列車」などで検索してみよう!してください!!
(著者の趣味です)

ここから先は乗務員となった冒険者一行にお手伝いをしてもらいます。
基本的な流れとして

  1. 一号車にて車掌さんが君たちに仕事を頼む
  2. その行動に判定が必要ならば、必要な達成値を提示して判定を行う
  3. 成功した場合、クリア後に貰える報酬にボーナスが追加される

という流れを繰り返していきます。
PLが自発的に仕事を探してお客さんからチップをねだることも可能です。

※PCの行動次第で、「こんなお客さんいませんか?」と提案されることもあるため、人数については明確な描写はせずに3号車にも4号車にもお客さんが半分くらいと伝えてください。
必須なのは被害者となる乗客です。5号車にいる設定ですが、変更可能です。
今回、NPCを3組用意していますが、適宜GMが人数の追加・削除など調整してください。

以下にシーンを2つ掲載します。1つ目は必須ですが、もう一つは自由に使用してください。

必須シーン

GMへ

下記シーンは乗客NPCの紹介のために必要となります。
ただし極端なことを言えば、乗務員としての仕事シーンを全て省略するならばNPCの描写は必須ではなくなります。
本当に時間がなく、卓の参加者全員が戦闘狂である場合は必須シーンを飛ばして「出発して2時間後、 君たちが不慣れながらも精一杯働いているところに列車が急停車してしまう」などと描写してミドル戦闘シーンに移ります。

切符を拝見

仕事の概要
車掌「切符を切る「もぎり」という仕事をしてもらいます。無賃乗車を防ぐために大切な仕事であるのは当然ですが、何よりもあなたたちが乗務員であるということをお客さんに伝えて安心させる必要があります。乗客の皆様には丁寧にあいさつしてくださいね」

判定
基本的な会話などはもちろん判定無しで行います。

報酬
乗務員としての基本的な仕事であるため報酬はありません。

描写
以下に記述するNPCは種族が人間であることを想定していますが、必須ではないので変更しても構いません。
<3号車>
一組の老夫婦が景色を眺めながら林檎酒を嗜んでいます。
あなたたちが切符を切るために話しかけると
「んー・・・どこにしまったか・・・。ああ、あった、これじゃな。はい、どうぞ」
と物腰の柔らかい対応で切符を差し出します。
※このNPCは観光を目的として乗車しているようです。
単純な仕事でも喜んでもらえるでしょう。

<4号車>
中年女性の4人組がいます。
わりと大き目の声でお喋りを楽しんでいるようです。
日常生活における愚痴、旦那の愚痴などについて盛り上がっているようですが、あなたたちに気づくとすぐに切符を取り出します。
※このNPCは料理を目的として乗車しているようです。
綺麗なもの、気品のあるものが好きな傾向があります。

<5号車>
高級感溢れる指定席ですが、そこにいるのはラフな格好をした3人組。
年齢や背格好は、依頼人のギルドマスターと同じくらいでしょう
大きいテーブルを使ってトランプで遊んでいるようです。負けたら一杯おごりだ!などと言い一喜一憂しているようです。
※このNPCは気晴らしのために仲のいい友人同士で遊びにきています。
刺激のあるもの、楽しいことは何でも歓迎します。

GMへ

上記の5号車の客ですが、シナリオ上「依頼人であるギルドマスターと間違われ強盗に襲われる」という流れになります。
依頼人を変更している場合、それに伴いこの乗客の容姿や年齢、好みなどを変更しておいてください。描写も自由に変えてしまいましょう!

追加シーンの例

車内食の提供

仕事の概要
軽食を作り、提供します。とくに難解な作業もないため、日頃の冒険で経験するような食事を作るスキルがあれば充分でしょう。

判定
冒険者レベル+器用度ボーナスで料理をします。
レンジャー技能がある場合、その技能レベル分のボーナスを上乗せします。
全員が一回ずつ判定を行い、そのうち最も高い達成値を採用します。

報酬
達成値13⇒一人10G
達成値16⇒一人50G
達成値19以上⇒一人100G

描写
やるべきことは、飲み物をグラスに注ぎ、材料を切ってサンドイッチを作って運ぶだけ。
自分のために作るならば雑に作っても問題ないのですが、今回作るのはお客さんに提供する料理です。
慣れないことを上手にこなす器用さが問われます。

<飯テロ描写の例>
今回作るサンドイッチは一枚のベーコンとたくさんのレタスが挟んであり、スライスされたピクルスが入っているものと、パインが入っているものの二種類があります。
ドリンクは、シソで風味をつけられた梅酒。ドーデン地方ではとても珍しいものですが、高級品というわけではなく素朴な味わいで飲みやすい。爽やかな口当たりのドリンクはサンドイッチに合うことでしょう。
もちろん、お子さん向けに新鮮なアップルジュースも用意しています。

GMへ

オリジナルの追加シーンを用意する場合、
・達成値を複数用意して、成功描写もそれに見合ったものにすること
・特定の技能を持っている人だけ判定するよりは、全員が判定を行い特定の技能を持つ人にボーナスを与えること
上記2点を強く推奨します。
アイデアとしては「車内販売としてお土産の営業をする」「手品や即興演奏などのパフォーマンスを行う」といったものから「車内を清掃する」「食器を洗う」などの簡単なものもあります。
難易度を変えるだけでなく、それに見合うように報酬を調整することでゲームとして面白いシーンが作れると思います。

ミドル戦闘

セッション時間が半分から6割経った辺りを目安として、このパートに移ります。
列車が止まり、大きく揺れます。
ここで転ばずに済むか、異常感知判定(目標値11)と軽業判定(目標値11)を行い、両方に失敗した場合に大きく転倒したものとし、受け身判定が可能な物理ダメージを15点受けます。
その直後に5号車から悲鳴が聞こえます。
冒険者たちが駆けつけると、依頼人に似ていた客が襲われており、強盗との戦闘になります。

※この時点で転倒したことにより大怪我をしたNPCはいないものとします。
乗客はみんな座っていたため軽傷で済み、立って仕事をしていた冒険者の方がより危険です。

エネミー

PC4人の場合:
レッサーオーガ( Ⅰ-442頁)」2体
匪賊の首領(Ⅲ-441頁)」2体

PC5人の場合:
レッサーオーガ( Ⅰ-442頁)」3体
匪賊の首領(Ⅲ-441頁)」2体

上記以外の人数の場合も、PC人数と敵の数が同じになるように調整してください。

GMへ

戦闘後の戦利品回収や薬草を使った回復の処理についてですが、シナリオの整合性を考えたときに時間の猶予はあまりありません。(想定は10分くらい)
ですが、もしこの戦闘で冒険者が深く傷ついてしまい回復が必要な場合は時間の猶予をもう少し与えるなどして調整してください。(30分くらいかかってもいいかもしれない)
シナリオの整合性よりも、ゲームとしての難易度調整を優先することをオススメします。

ボス戦闘

強盗を倒し、止まった列車の状態を確認しようとすると外の異変に気付きます。
巨大なムカデが遠方から近づいてきていることが分かります。
列車の進行方向を塞ぐように移動しているため、魔動列車の復旧よりも先に討伐する必要があります。戦闘です。

エネミー

プレーンセンチピード(Ⅱ-396頁) 」1体
合計部位がPCの人数と等しくなるように頭部が1部位、胴体を(PC人数-1)部位用意します。
PC人数が6人を超える場合は、足りない部位の分だけ「ボルグハイランダー ( Ⅰ-442頁) 」を出現させます。
そしてプレーンセンチピードのそれぞれの部位に対し、 剣のかけらを一つずつ使い強化します。
※難易度を上げる場合は、剣のかけらを頭部に集中して使用します。

GMへ

このボスであるプレーンセンチピードは蛮族列車強盗団が誘導した魔物という設定ですが、それを言述してもいいですし、しなくてもいいです。
そもそも誘導しなくても列車を襲うことがある魔物であるため、詳しく描写しない方が話がスムーズに進むこともあります。

このように「シナリオに書いてあるから、記述は全部伝えよう」というのが必ずしも適切ではないこともあります。
PLに対して上手く情報が伝わらずに勘違いが起きたりすることもあるため、情報は最低限必要なことだけを描写し質問によって補完することがスムーズに卓を進行するコツです。

エンディング

討伐後、ほどなくして列車の復旧が完了し、再出発します。その後、トラブルは無く安全に運行します。
予定より遅れ、すっかり夜も遅くなった時間に第三都市グランティンに到着します。
到着したところで乗務員の制服を返却しましょう。(希望するプレイヤーがいれば制服はそのままプレゼントしてもいいでしょう)

この都市にある冒険者ギルド支部に荷物を運んだところで、依頼人のギルドマスターから報酬受け渡しに加えて説明を受けます。
「今日は災難だったね。黙っていて申し訳なかったのだけれど、この荷物の中身は君たちが日ごろ集めてくれている剣のかけらなんだ。これがあれば守りの剣の結界も維持できる。しかし、その結界を忌避する蛮族たちにとっては厄介なものだから狙われてしまう。だからこうして情報を隠しながら運搬するしかなかったんだ。君たちにも秘密にするほど重要な任務だ」と言います。
続けて、「まさかそれで強盗に襲われるとは思ってなかったんだけど、それを倒してくれた君たちには追加で報酬を渡すよ。本当にありがとう」と告げる。

今回の冒険によって、冒険者たちが直接おこなったことはさほど大きいことではなかったかもしれません。しかし、今日の出来事はこの都市の安寧を守ることに繋がっていたのでした。

リザルト

基本報酬:2000G
強盗の討伐報酬:500G
これに
・乗務員の業務についての報酬
・戦利品
を追加します。

基本経験点:1000点
今回敵の強化に使われた個数の<剣のかけら>

おわりに

シナリオをネットで公開するのは初めてなのですが、いかがでしたでしょうか。
なんかおかしいな?と思うところがあれば適宜修正してください。
GMが最終的な判断を行い、セッションを楽しいものにするのが何よりも大切です。

このシナリオを読んで「シナリオを作るの難しそうだな」と悩む必要はありません。
落ち着いて考えてください、最初から完璧なものが作れる人のことを指すために天才という単語が存在しているのです。一般的にはそうではなく、最初は失敗するものです。

「どうせ失敗するなら、失敗しても怒られない親切にしてくれる場所が欲しいな」とか、「失敗してもフォローしてくれる優しい経験者と遊びたいな」と思った方は是非ともSandboxにお越しください。次は私と遊びましょう。

著者 ネミ
私、このサイトの管理人のネミです!
こっちはアドベントカレンダーに丸一日遅刻して書き上げたブログの記事!
(荷物を届けるシナリオの記事であることと、魔女の宅急便の台詞をかけている)

コメント

  1. […] 今回、例として挙げたシナリオをサンプルシナリオとして「ソード・ワールド2.5で始めるシナリオ作成【後編】」というタイトルで公開したいと思います。追記:こちらです。http://sandbox.sakuraweb.com/?p=992 […]

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