SW2.5のクリティカルってなんだ?

本記事は、TRPGサーバー 「Sandbox」 Advent Calendar 2019 の寄稿記事です。 https://adventar.org/calendars/3873

結論

この記事では以下の計算結果に示される、クリティカル値とダメージの期待値の関係について述べます。

注意事項

この記事には以下の数学用語が出てきます。数学アナフィラキシーショック(数式等を見ることで、過去の学生生活を連想し、めまいや吐き気、重度の場合は昏睡状態に至る不治の病)を持病にお持ちの方は今すぐブラウザバックを。

  • 確率
  • 和演算子Σ
  • 対数

また、深夜にテンションあがって1時間ほどで数式いじって作ったため、理論的な誤りがある可能性があります。誤りを見つけた場合はご一報ください。

SW2.5のダメージ決定手順

ルールブック1巻「第二部 ルール」のpp.142-146より、「合算ダメージ」(敵の防護点を引く前のダメージの値)は以下の通り算出される。

  1. ダイスを2つ振り、出目を得る。
  2. 出目と「威力表」より、「威力表の結果」を決定する。
  3. 出目が「クリティカル値」以上か判定する。
  4. 手順2~3を手順3の判定が偽になるまで繰り返す。(「振り足し」)
  5. 手順2で決定した「威力表の結果」の和を求める。
  6. 手順5の結果に「追加ダメージ」及び「ダメージ増加効果」を足す。

この手順の結果得られる与ダメージの値は、一般的に以下の数式で表される。

­この式において、「クリティカル値」が影響する項は右辺第一項のみである。これについて次節で考察する。

クリティカル値が影響する式の整理

まず、「振り足し」が発生しない場合について考える。

ダイスの出目をd、各出目がでる確率をp_d、各出目での「威力表の結果」をK_dとそれぞれおいたとき、「威力表」@「クリティカル値」の期待値E_1は以下の式で表される。

次に「振り足し」が発生する場合について考慮する。

「振り足し」が発生する確率をp_eとおく。なお、これは単純に「クリティカル値」以上の出目がでる確率の和ではなく、「クリティカル値」以上の出目が連続して発生する場合の確率も含むものである。p_eを用いることで、 「威力表」@「クリティカル値」の期待値E は次式で表される。

ここで上式の(1+p_e)をダメージ増加係数p_addと命名する。p_addは「振り足し」が発生する回数をn、「クリティカル」が発生する出目をCとおくことで以下の式で定義できる。

「クリティカル値」C=13以外では、「振り足し」が発生する事象が常に存在するため、上式は一意の解をもたない。しかし、確率をk乗しているため値はある範囲に収束する。

ここでx回「振り足し」が発生する確率p_xは次式の通り。

この式の右辺の底は、「クリティカル値」以上の出目が発生する確率であり、p_cと置き換える。上式をxについて解くと

が得られる。逆説的に、これ以上「振り足し」を考慮しなくていい確率をp_xとして与えてやることで、ダメージの期待値として考慮すべき「振り足し」の発生回数xを決定できる。

「威力表」を確認したところ、「威力表の結果」はたかだか2桁である。ゆえにp_x=0.001まで考慮すれば、十分有意な「威力表」@「クリティカル値」の期待値を計算できる。

期待値を計算した結果

前節で整理した期待値についてExcelで計算を行った。結果を以下の図に示す。

結果、「クリティカル値」13から「クリティカル値」8にクリティカルを下げたときに、「威力表の結果」の和は1.713倍に増加することがわかる。この計算結果を利用することで、より「威力」の高い武器を持つようキャラクターを作成すべきか、「クリティカル値を下げる」ようキャラクターを作成すべきか、一つの指針が得られるのではないだろうか。

実際に比較してみよう

一つ実際の計算例を出す。

ルールブック2巻のp.243のスナイパー。
スナイパー+閃牙の矢+オーダーメイド+イグニタイト加工と組み合わせることで、k38@8の武器 (必要筋力13)となる。
k38の期待値は8.000なので、k38@8の期待値は8.000*1.713で13.70である。

C値@10の武器(閃牙の矢なし)の場合、k値の期待値が13.33を超えれば上記スナイパー以上の武器と言えるが、これは基本ルールブック環境では <ボウ>SSの武器に加工を施したもの程度しか超える武器は存在しない。

また、C値@9の武器(閃牙の矢あり)の場合、k値の期待値が9.90を超えれば 上記スナイパー以上の武器と言える。 この値はk50以上であればよい。これならば <ボウ>SS 以外にも、コンポジットボウ+イグニタイト加工(k53@9、必要筋力23)、アヴェンジャーボウ+オーダーメイド+イグニタイト加工(k50@9、必要筋力20)の2つがスナイパーk38@8以上の武器としてあげられる。

つまり、筋力20を確保できないかつ筋力13ならば確保可能な、基本ルールブック環境における弓の最終装備はスナイパーであると言える。

最後に

クリティカル武器は所詮ロマンと思っていたたが、スナイパーがまさかの最終装備候補足り得る武器と証明できるとは思わなかった。

おそらくこの議論だけではダメージの期待値についての考察は不十分で、弓カテゴリに関してだけでも(1)防護点等を考慮した際にダメージが0となる場合の考察(2)狙撃による防護点半減時の考察(3)クリティカルレイを使用した場合 の考察 (4)他の矢を使用した場合の考察が欠けている。

近接職の場合は、各種宣言特技及びマルチアクションや二刀流での手数の考察も必要である。
更に言えば、命中率についての考慮もかけている。

これらが今後の課題となるが、めんどくさいので私はやる予定はあんまりない。

著者:夕蝶(plough#3408)

 2018年2月19日Sandbox加入。

 高校時代は不登校、大学は工学系のため確率論についての知識に乏しく、なぜこんな記事を書いてしまったのか、本当にこの考察は正しいのか、と書いている本人は半信半疑である。

 好きな方程式は、L=2ρC_(Lα)aU^2

 空気中で傾けた平板翼にも揚力Lが発生する(薄翼理論)ことを示す式。

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